制度と手続は警察庁・警視庁の公式資料を基に整理した。手続の案内は地域や事業形態によって異なるため、実際に着手する際は事業の本拠を管轄する警察署の現行案内も確認したい。

事業の形を先に描く

創業チームがアプリの利用動線と安全対策をホワイトボードで整理するイラスト

最初に用意するのは届出書よりも、サービスの流れを一枚で説明できる事業設計だ。対象にする利用者、プロフィールに載せる情報、誰がそれを見られるか、相手への「いいね」やメッセージから一対一の連絡が始まるまでを整理する。利用規約で掲げる目的だけでなく、実際の機能や運営上の扱いも確認する。

準備を進める順序は、次の四段階に分けると見通しが立つ。

始めるまでの道筋

  1. サービスを描く:利用者、掲載情報、閲覧範囲、連絡の流れを機能図にする。
  2. 届出対象か考える:四つの要件を機能図に照らし、判断が難しければ管轄警察へ相談する。
  3. 提出方法を決める:本拠と書類を確認し、自分で進めるか行政書士に依頼するか選ぶ。
  4. 運用を整える:年齢確認、通報への対応、担当者と記録の流れを決める。

例えば、閲覧範囲を会員に限っていても、不特定または多数の人が会員になれるなら、それだけで「公衆に見せていない」とは言えない。無料アプリでも、反復して提供するなら事業性の確認が要る。アプリという名前や料金の有無だけで届出対象を決めず、機能の組み合わせを見るのが出発点だ。

設計メモには、運営主体と事業の本拠、年齢確認を置く画面、通報を受けてから対応する担当も記しておく。届出の要否だけでなく、開始後に安全対策を回せるかを早い段階で点検できる。

届出の対象を4要件で確かめる

警察庁の2026/04/27付の解釈基準では、次の四つをすべて満たす場合をインターネット異性紹介事業としている。

  1. 交際情報を掲載:面識のない異性との交際を望む人の求めに応じ、その人の交際に関する情報をサイトやアプリに載せる。
  2. 不特定または多数が閲覧:その情報を不特定または多数の人が閲覧できる。
  3. 一対一で相互に連絡:情報を見た人と載せた人が、サイトやアプリの機能を通じて一対一で相互に連絡できる。
  4. 反復継続して提供:これらのサービスを、有料か無料かにかかわらず反復継続して提供する。

四つを製品仕様に当てはめるときは、プロフィールの公開範囲だけでなく、推薦で相手が表示される仕組みや、反応から会話が始まる経路まで見る。警察庁の基準は、会員制や表示件数の制限があっても公衆閲覧性に該当し得ること、文字のメッセージ以外の反応をきっかけに一対一で連絡できる形も対象になり得ることを示している。

境界が曖昧なら、機能図を持って管轄警察に相談する。ここでの整理だけで個別サービスの該当性を確定しない。

提出先と書類を整える

届出窓口で書類を提出する場面のイラスト

届出対象となる事業なら、開始前に準備を済ませる。警視庁の案内では、事業の本拠となる事務所の所在地を管轄する警察署を経由して、公安委員会へ事業開始届出書と添付書類を提出する。開始の前日までに、不備のない書類が届くようにする必要がある。事務所がない場合や複数ある場合は本拠の考え方が変わるので、提出先を先に確かめたい。

警視庁が示す書類には、開始届出書、住民票の写し、身分証明書、事業で使うURLやアプリの使用権限を示す資料がある。法人では役員全員分の住民票と身分証明書、定款の謄本や登記事項証明書なども必要になる。ここでいう身分証明書は本籍地の市区町村が発行する書類で、運転免許証ではない。外国籍の役員など個別の扱いは管轄の案内を確認する。

Webサイトならドメインの利用権限資料、アプリなら事業者名とアプリ名が分かる申請画面または申請メールの印字が警視庁の例に挙がっている。個人と法人では誓約書も異なる。年齢確認に伴う識別符号付与業務を委託する場合には、委託先に関する追加書類も確認する。書類の名称だけで揃ったと判断せず、事業形態と委託内容に応じて管轄の案内と突き合わせる。

警視庁の案内では開始届出の手数料は不要。ただし、必要書類の取得や提出の実費、準備に使う時間は別にかかる。記載漏れや添付不足のある書類は受理されないため、公開予定日から逆算して確認の時間を確保する。

自分で進めるか行政書士に依頼するか

創業者が専門家に準備書類を見せながら相談するイラスト

自分で進める場合は、機能と運営の実態を説明しながら書類を整えられる。一方、提出先の確認、個人・法人で違う添付書類の収集、記載内容の整合確認を社内で担う必要がある。

仕様変更が続く段階では、書類を作り直す時間も見込んでおきたい。

日本行政書士会連合会は、行政書士の業務として官公署へ出す書類の作成、その内容の相談、提出手続の代理を案内している。依頼する場合は、該当性についての相談、書類作成、添付資料の確認、提出対応のどこまでを頼むか、見積もりと一緒に明確にする。

行政書士へ任せても、実際のアプリの機能や運営方法を伝えるのは事業者であり、届出の受理やサービスの安全性が保証されるわけではない。

費用対効果は合計コストで考える

実費と作業時間を二つのノートで比較するイラスト

警視庁が案内する開始届出の手数料は0円。支払いが生じるのは、必要な証明書の取得や、行政書士へ依頼した場合の報酬などだ。以下の表で、進め方ごとに確認できた金額と追加費用を見比べよう。*1

*1 掲載した料金は2026/10/01に各情報源で確認した公表額です。

費用対効果は合計コストで考える
進め方確認できた金額別に見る費用・条件
自分で:新宿区の個人例届出0円。住民票300円+身分証明書300円=計600円住所・本籍がともに新宿区の場合。郵送受取や移動は別途
自分で:法人の追加書類登記事項証明書1通・50枚以内は490〜600円役員分の証明書も必要。請求方法で金額が変わる
行政書士:米井事務所の例届出報酬44,000円(税区分の記載なし)交通費等は実費。書類の代理取得は1書類2,200円。証明書の実費も別途
行政書士:熊野事務所の例届出報酬82,500円から(税込)証明書の実費と依頼する作業範囲は見積もりで確認

横にスクロールして比較できます

法人の登記事項証明書は、オンライン請求・窓口受取なら490円、郵送受取なら520円、窓口で書面請求すると600円(いずれも1通・50枚以内)。上の四行は条件の異なる例で、金額をそのまま足して比較するものではない。二つの事務所の金額も全国共通の相場ではない。

新宿区以外の証明書代は住所地・本籍地の自治体で確認する。依頼する場合も、証明書代、修正、警察署への提出、開始後の変更届が見積もりに含まれるかを確かめたい。社内の人件費は外から決められないので、自社の担当者が使う時間と実際の時間単価を足して比べる。届出対象か判断しづらい場合は、費用比較より先に管轄警察へ機能図を持参して確認する。

届出後の安全対策を運用にする

担当者が利用者プロフィールの確認と対応記録を整理するイラスト

届出は開始時の手続であり、安全運用の完了ではない。警察庁の解釈基準は、児童が利用できない旨の明示、児童でないことの確認、禁止される誘引情報への閲覧防止措置などを示している。

年齢確認を登録画面の注意書きだけで済ませず、プロフィールの掲載・閲覧や相互連絡に至る各動線で、必要な確認が働くよう設計する。

編集部が運用上あわせて考えたいのは、問題のある投稿を誰が見つけ、誰が判断し、どのように閲覧を止め、対応を記録するかだ。通報機能を置くだけでは対応は終わらない。担当と手順を決め、運営開始後も実際の画面と処理を点検する。

事業の内容や届出事項を変えるとき、事業を廃止するときの届出も忘れずに確認したい。

年齢確認と、サービス独自の本人確認は目的も方法も別に整理する。確認方式ごとに取得する情報を絞り、保存の要否・期間・アクセス制限・削除を設計する。通報の担当者と対応記録も開始前に決めておく。届出を行政によるアプリの安全性の保証として表示しない。

開始前のチェックリスト

準備の確認0 / 6 項目

確認した項目にチェックを入れて、準備を整理できます。

出典・原典