ただし、外部の決済を選べばストアへの支払いがなくなる、とは限らない。決済会社の審査、継続課金の管理、返金時の窓口も考える必要がある。日本向けのデジタルサービス、とくに自動更新型の有料プランを例に、事業者が判断する順番を整理する。

スマホ法は何を変えたのか

図書室で無地の書類を手に持つ人

スマホソフトウェア競争促進法、いわゆるスマホ法は、2025/12/18に全面施行された。公正取引委員会は、Apple Inc.、iTunes株式会社、Google LLCを、対象となるソフトウェアごとに指定している。

アプリストアに関する規定では、指定事業者が、アプリ事業者に自社以外の決済サービスを使わないことを条件にしたり、その利用を妨げたりする行為などを規律する。同じ商品やサービスを自社サイトでも販売する場合には、価格の案内やサイトへの誘導に関する規定もある。

ここで主語になるのは、アプリストアについて指定を受けた事業者だ。マッチングアプリの運営者全員に、代替決済の導入を義務付ける法律ではない。 一方、セキュリティの確保などについて法に定める例外もあり、プラットフォームが設ける審査や条件を一律に違法と決めつけることもできない。

法律上の規律と、各社が提示するプログラムへの参加条件は分けて確認しよう。アプリ事業者には、別途、契約や消費者保護、決済、個人情報に関するルールも関わる。

決済の入口を三つに分ける

スマートフォンとカードを前に支払い方法を考える人

同じ有料プランでも、利用者がどこで支払いを始めるかによって、実装や取引の報告先が変わる。まずは入口を分けると、自社が確認すべきことが見えやすい。

決済の入口を三つに分ける
支払いの入口利用者の動き運営者が確認すること
ストアのアプリ内決済アプリ内でストアが提供する決済を選ぶプランの対象、ストアの手数料、更新・返金の案内
アプリ内の代替決済アプリ内でストア以外の決済手段を選ぶプログラム参加条件、決済会社の審査、実装・取引報告
外部サイトへの案内アプリから自社サイトなどへ移動し、そこで支払うリンクの要件、売上報告と手数料の対象、サイト側の決済・問い合わせ対応

横にスクロールして比較できます

Appleが公正取引委員会へ提出した説明では、日本のApp Storeで配信する対象アプリについて、アプリ内の代替決済とAppleのアプリ内購入を選択肢として併せて表示する条件が示されている。対応する端末や実装、取引報告の要件は契約時に確認したい。

Google Playの日本向け「選択型決済」も、参加手続きと所定のAPI統合を前提に、Playの請求サービスと代替手段を提示する仕組みだ。アプリ内の代替決済と、外部サイトへのリンクは同じものではない。自社が使いたい経路と、利用者に示す選択肢をそれぞれ確認する。

手数料は何が重なるのか

電卓と財布、無地のカードを並べた静物

次の表は、日本向けのデジタルサービスに関する公表条件の一例だ。Appleは通常条件と軽減条件、Googleは自動更新型サブスクリプションを示している。対象や計算の基準が同じではないため、そのまま各社の安さを順位付けする表ではない。*1

*1 公正取引委員会が公開したApple提出資料、Google PlayおよびStripeの公開案内を2026/10/29に確認。適用資格、取引内容、契約、税の扱いにより条件は異なる。表には各事業者の費用や税をすべて含めていない。

手数料は何が重なるのか
例公表されている手数料合わせて見る条件
Appleのアプリ内購入通常26%。対象プログラムの参加者など、軽減条件に該当する場合は15%ストア分と決済処理分を含む。自動更新は1年経過後の軽減条件も確認する
Appleのアプリ内代替決済通常はストア分21%、軽減条件では10%代替決済事業者の処理費用や管理費などは別途確認する
Google Playの請求サービス自動更新型サブスクリプションではサービス料10%に請求サービス分5%日本の新料金体系の例。都度購入など別の取引には別の区分がある
Google Playのアプリ内代替決済自動更新型サブスクリプションではGoogleのサービス料10%代替決済事業者の費用は別。選択型決済の参加条件と取引報告が必要

横にスクロールして比較できます

Appleの数値は、同社が公正取引委員会へ提出した2025/12/18付の遵守報告の説明を基に整理した。公正取引委員会が、その手数料の適法性を認定したという意味ではない。Appleのアプリ内購入の通常26%は、ストア分21%と決済処理分5%の組み合わせとして説明されている。

外部サイトへ直接リンクする場合は、アプリ内代替決済とも条件が違う。Appleの提出報告では、リンクをタップしてから7日以内の対象売上について、通常15%、軽減条件に該当する場合は10%のストアサービス料を示している。決済会社側の費用は別に確認する。Googleの現行「選択型決済」でも、自動更新型について所定の外部ウェブリンクから24時間以内に購入されたアプリ内のデジタル機能・サービスに、サービス料が設けられている。

決済会社の料金は、審査とセットで見る

たとえばStripeの日本向け公開料金には、標準のカード決済処理が成功した支払いごとに3.6%という例がある。継続課金管理にStripe Billingも利用する場合、対象となるBilling取引額に対する公開の従量課金0.7%が別の費用候補になる。

ただし、Stripeはオンラインでの出会い・マッチングを制限付き業種に挙げており、追加情報による審査の結果、利用を認められない場合もある。公開料率は、どのマッチングアプリでもそのまま契約できるという保証ではない。日本の禁止業種として国際結婚仲介ビジネスも別に挙げられており、該当する事業はその条件も確認する必要がある。税やその他の追加サービス、返金、不正利用への対応も含め、事業内容を伝えたうえで適用条件を確認しよう。

仮に決済処理の料率だけを比べても、実装や継続課金の管理、問い合わせにかかる費用は見えない。自社の契約条件と運用体制が決まってから、利用する機能と費用を同じ期間で並べることが、実態に近い比較になる。

返金・問い合わせ・取引報告を誰が担うか

ヘッドセットで相談に応じる担当者

代替決済を導入すると、ボタンを追加するだけで運用が完結するわけではない。利用者が購入履歴や更新状況を確認できるか、返金を求めるときに誰へ連絡するか、不正な取引にどう対応するかを、決済会社との役割分担まで含めて決めておきたい。

Googleの選択型決済では、外部の支払いについて注文履歴、サブスクリプションの管理、問い合わせや返金請求へのアクセスなどを用意する条件が示されている。所定の取引報告も必要だ。Appleのアプリ内代替決済でも、取引の記録・報告や税の取扱いを、適用される契約とともに確認する必要がある。

すでにGoogleの旧「外部決済プログラム」を使っている場合は、移行時期にも注意したい。日本では2026/09/30から新規登録の受付を終え、既存の登録事業者が日本で外部ウェブリンクを引き続き提供する場合は、2027/03/31までに選択型決済への移行が案内されている。従来の案内を、新規登録できる現行制度として読み続けないことが大切だ。

利用者から見れば、どの経路で支払っても、自分の有料プランがいつ更新され、どう止められるかが分かることが重要になる。購入画面だけでなく、購入後の確認・停止・問い合わせまで、一連の導線として設計したい。

自分たちの事業で決める順番

決済方式を選ぶ前に、まず販売するものと対象地域を明確にする。マッチングアプリの中でも、デジタル機能の購読なのか、別の形のサービスなのかによって、確認すべき条件は変わる。

  • 販売内容を定める:誰に、何を、どの期間提供するか。自動更新の有無も決める。
  • ストアの条件を確認する:対象地域、OS、利用するプログラム、実装と報告の要件を調べる。
  • 決済会社に事業内容を伝える:出会い・マッチング事業の審査対象か、利用可能な手段と個別料金を確認する。
  • 費用を分けて見積もる:ストア、決済処理、継続課金管理、税、返金、開発・運用の費用を区別する。
  • 利用者対応を決める:購入後の明細、更新停止、返金、問い合わせ、不正取引時の担当を決める。

手数料の数字は出発点であり、実際の費用対効果は、使える決済手段とその後の運用を合わせて初めて見えてくる。疑問が残るときは、公正取引委員会の事業者向け案内も参照しつつ、適用される契約や制度を確認しよう。

出典・原典